8月のある日曜日、朝から昔仕立てたというブルーのワンピースを着て、久しぶりにお化粧をされるE様が鏡の前にいらっしゃいました。
お綺麗ですね、とお声をかけると「昔はもっと綺麗だったんだけど」と笑って仰いました。
E様のあなた専用の日は、“E様の92歳のお誕生日会を昔から通っていた洋食屋さんで開催すること”でした。
その洋食屋さんの入り口には15段程の階段があり、歩行が不安定気味のE様にとって一つの心配事でした。
ところが、いざお店の入り口に到着すると、「久しぶりだわ」と仰いながら、ご自分からどんどん階段を登って行かれました。もちろん、私たちもすぐ隣で一緒に階段を登ったのですが、お手伝いはほぼ必要ないくらいしっかりと自分の力で階段を登られました。
お店は貸切で、親戚の方々が勢揃い。E様が到着すると皆様拍手でお出迎えをされ、口々に「よくあの階段を登れたね」と驚きの言葉をE様にかけていらっしゃいました。
お誕生日会では、昔から大好きだったというお店特製のビーフシチューを美味しそうに召し上がり、久しぶりに会うひ孫さんを大切そうに抱っこされ、素敵な時間を過ごされていました。
ホームに帰られてから、「私、あの店に行けたのよね?ありがとう。夢のようでした」笑顔いっぱいに仰っておられたことが、とても印象的でした。